大阪地方裁判所 昭和38年(ワ)3607号 判決
以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。
〔判決理由〕よつて、まづ被告の責任の有無について判断する。
(一) 原告主張の請求原因事実第二項(1)(イ)は当事者間に争いがなく、同(1)(ロ)の事実も被告が共同運行供用者であつたとの事実を除き、<証拠>及び弁論の全趣旨により明らかである。<編註、請求原因第二項(1)(イ)(ロ)の事実は、次のとおりである。すなわち>、(1)(イ)被告は家庭用ガス管敷設などの事実をなし大阪ガス株式会社のガス管敷設工事の請負をしているものであるが、その現場工事には専属的な下請業者を使用し、これに被告所有の工作車を貸与して作業をさせていた。訴外株式会社楠本組(以下楠本組と略称する。)はこのような被告の専属的下請業者の一つであり、木沢康二は楠本組の単位工事班の班長であり、本件事故車は被告から楠本組に貸与されていた工作車の一つである。(ロ)そして、本件事故車は被告が購入し、これをガス工事用に一部改造し、所轄官庁にも被告を使用者として届出で、責任保険も被告が加入し、車体にも「大阪装置建設」<編註、被告の商号である>と表示してあつた上、工事現場附近には被告の現場事務所を設置し自己の作業の監督として右木沢の工事班に対し直接作業の指示を与えていた。従つて、被告は楠本組と共に本件事故車の共同運行供用者の地位にあつた>。
の、証言そして、<証拠>を総合すれば、
(1) 訴外木沢康二は楠本組の社員であるが、右楠本組は小さい被告の下請を専業とする個人会社であつて、独立した会社の現場事務所もなく、被告の現場事務所の一隅に表札もかけずに同居している状態であつたこと。
(2) 本件事故車も、もともとは大阪瓦斯から元請である被告に対し工作車を使用して工事をするようにとの要望があり、被告としては自己の手足として使つている楠本組に対し自己の仕事を通切にさせるために貸与したものであり、楠本組が所有する車一、二台に対し、貸与車一二、三台という状態で全く親会社、子会社以上の密接な関係であつたこと。
(3) 仕事についても、楠本組はなる程作業員を雇傭し、作業をさせているものの、十分な監督の機関もなく、わずかに三人程度の事務員が被告から与えられた命令書を、三、四人で構成された工事班に渡すのみで、その後は被告の監督者の指示により工事班の責任でこれをなし、給与も出来高払でなしていたこと。
(4) 本件事故車は楠本組から木沢康二の工事班に貸与されていたが、会社としては管理などすべてをその工事班にまかせ、工事班は自己の負担で修理しガソリンを買入れるなど管理一切をなし、これを動かしていたが、その置場所は前記のとおり被告の現場事務所であつたこと。
がそれぞれ認められる。右認定の事実によると、なるほど楠本組において作業員を雇入れ、これが雇傭関係から生ずる法律上の主体ではあつたが、事実上は他の第三者からみて被告が自己の作業員を使用しているのと異ならない状態であつて本件事故車の運行は楠本組のためであると同時に被告のために運行されていたものであるから、被告は楠本組と共に共同運行供用者というべきである。
(二) 又、<証拠>を総合すれば、訴外木沢康二は本件事故車の管理者であつたが、昼の仕事を終えた後夜の仕事に入る前運転手が夕食に行つている間に自宅に帰り夕食をなし、かつ自己の監督する工事班の作業員のために夜食を準備しようとして本件事故車を運転して家に帰り、夕食をなし、夜食の弁当を積んで現場に殆る途中で起した事故であることが認められる。右事実によれば訴外木沢康二の運転は客観的に見れば全く会社のためになしているものであり、その運行も会社の支配外の行為とはいえない。
以上の理由により被告は自動車損害賠償保障法第三条の運行供用者として本件事故により生じた損害を賠償すべき義務がある。 (三宅純一)